糖尿病とは
糖尿病は、ブドウ糖(血糖)の利用がうまくいかず、血糖値が上がってしまう病気です。
血糖濃度がいつも高い状態が続くと、血管をはじめとする全身の組織に悪い影響が及んできます。
糖尿病の起こるメカニズムは大きく分けて次の2つあり、どちらか一方または両方が生じると糖尿病を発症します。
① 血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が低下
② 分泌されたインスリンの効きが悪い
糖尿病は、高血圧・脂質異常症(高脂血症)・肥満(特に内臓肥満)と並び「メタボリックシンドローム」の4つの要素の1つです。 したがって糖尿病の治療はもちろんのこと、肥満や高血圧、脂質異常症など、他の生活習慣病も同時に治療していくことが大切です。
糖尿病の分類
大きく「1型」と「2型」の2種類に分けられますが、「その他の原因による糖尿病」や「妊娠糖尿病」もあります。
1型糖尿病
インスリン(血糖値を下げる働きをしている体内ホルモン)を産生する膵臓の細胞(膵β細胞)が免疫系の異常反応により、壊れてしまい、急にインスリンが分泌されなくことが原因です。
若いうちに発症することが多いですが、実際にはどの年齢でも起こります。
1型糖尿病では、インスリンの分泌が極度に低下するか、またはほとんど分泌されなくなるため、血中の糖が異常に増加し、重篤な症状を引き起こしかねません。日本では糖尿病全体の5%程度です。
1型糖尿病の治療
1型糖尿病の治療は、インスリンを注射により適切に補充する(インスリン療法※)ことです。
インスリン補充によって血糖値をコントロールしていけば、発症前と同様の生活を送ることができます。
2型糖尿病
生活習慣による影響が強く、日本人に最も多いタイプの糖尿病です。
糖尿病になりやすい遺伝的体質を持っている人が、食べ過ぎや運動不足、肥満、ストレス、などを引き金に発症します。日本における糖尿病患者さんの95%は、この2型糖尿病です。
2型糖尿病の治療
糖尿病は現在のところ完治させることはできませんので、一生つき合ってく必要があります。
しかし、糖尿病そのものは治せなくても、血糖値を正常に保ち、糖尿病による合併症起こさずに、あるいは進展を阻止して健康を保持することは十分に可能です。
医師の指導のもと、まずは食事療法と運動療法を行います。これだけで正常値になる患者さんもいらっしゃいます。
糖尿病が進行したケースだったり、食事・運動療法だけでは血糖値がうまく下がらなかったりするような場合には、内服薬による治療やインスリン療法※を行うことになります。
※インスリン療法とは
注射により体外からインスリンを補い、血糖変導変動をできるだけ健康な人近づける治療法です。
誤解をされている方も多いですが、インスリン療法は糖尿病の最終的な治療手段ではありません。
患者さん自身の膵臓のインスリン分泌能力を保護するために、糖尿病治療の比較的早い段階から始めるケースが増えています。
糖尿病の検査
糖尿病の診断にあたっては、血液検査や、症状、臨床所見、家族歴、体重歴などを参考にして、医師が総合的に判断します。
また、糖尿病は初期のうちは自覚症状がほとんどありませんので、患者さんの病状を把握するためには血糖やHbA1c※(ヘモグロビン・エーワンシー)の値を定期的に検査していく必要があります。
※HbA1cとは
血糖値が高くなると、ブドウ糖が赤血球内のヘモグロビン(Hb)と結合し糖化ヘモグロビンとなります。
これがHbA1cと呼ばれるもので、過去1~2ヶ月における血糖の平均的な状態を反映し、糖尿病治療において最も大切な管理指標となっております。
合併症の進行との関連性も深く、7.0%未満(国際標準値)がコントロールの目安となります。
こんな症状は受診をお勧めします
- 健診等で「血糖値の異常」を指摘された
- 甘いものばかり食べている
- よく食べているのに痩せる
- ジュースや水分をたくさん飲んでも喉が渇く
- 尿の回数が多く、量も多い
- 尿の臭いが気になる
- 手足が痺れる
- 視力が落ちてきた
など
糖尿病の合併症
糖尿病の合併症には、三大合併症と言われる「糖尿病網膜症」「糖尿病性神経障害」「糖尿病性腎症」や大血管障害(心筋梗塞や脳梗塞、末梢動脈性疾患など)、歯周病があります。
糖尿病の三大合併症
糖尿病網膜症(目の合併症)
目の内側には、網膜という膜状の組織があり、光や色を感じる神経細胞が敷きつめられています。
高血糖の状態が長い期間にわたって続くと、ここに張り巡らされた細い血管が動脈硬化による損傷を受け、視力が弱まってきます。
進行してしまうと出血や網膜剥離を引き起こしたり、失明に至ったりするケースもあります。
また、白内障になる人も多いと言われています。
糖尿病網膜症は、自覚症状が無いことも少なくないので、目に特別な異常を感じなくても定期的に眼科を受診し、眼底検査などを受ける必要があります。
糖尿病性神経障害
主に足や手の末梢神経が障害されます。
その症状は様々で、「手足の痺れ」「やけどや怪我の痛みに気づかない」などです。
そのほか下痢や便秘などの腸の不調、顔面神経麻痺、立ちくらみ、発汗異常、ED(勃起不全)など、多様な症状が現れてきます。
糖尿病性腎症
血液を濾過して尿をつくる腎臓の糸球体(しきゅうたい)という部分の毛細血管が障害を受けて機能が損なわれ、だんだんと尿がつくれなくなってきます。
最終的には人工透析といって、機械で人工的に尿をつくらなければならなくなったりします。
現在、人工透析になる原因の第1位が、この糖尿病性腎症です。
この合併症も自覚症状がないままに進行しますので、早期に発見するためには、定期的に腎機能を検査する必要があります。
糖尿病の大血管障害
心筋梗塞
心臓に酸素や栄養を供給している冠動脈が動脈硬化を起こし、血管が傷ついてしまうと血管が詰まり、心筋梗塞を発症します。通常なら、心筋梗塞が起こると、胸が強く締めつけられるような激しい痛みが生じますが、糖尿病による神経障害を併せ持っている患者さんでは、痛みを覚えないケースもあります(無痛性心筋梗塞)。
脳梗塞
脳の血管が詰まってしまい、その先の血管に血液が供給されなくなってしまうのが脳梗塞です。
半身の麻痺や言葉の障害などが代表的です。
末梢動脈性疾患
足の血管の動脈硬化が進行し、狭窄や閉塞によって血流が悪化することによって引き起こされます。
足やふくらはぎが痛くなって運動ができない、休み休みでないと歩けない(間欠性跛行)などの症状が現れてきます。
さらに症状が進むと、潰瘍や壊疽を起こしてしまい、足を切断しなければならなくなるケースも出てきます。
歯周病
成人が歯を失う最大の原因は虫歯ではなく、歯周病です。
血糖のコントロールが悪いと抵抗力や組織の修復力の低下により歯周病がより重症化しやすいと言われています。
そして歯周病により誘導された炎症性の化学物質によりインスリンの働きが悪くなり、血糖値が下がりにくくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。